the eating & lives in TAKASHIMA

第22話 法事料理でおもてなし
~浦の集落が守って来た器と料理②~
【 マキノ 】

ひとつひとつを丁寧に
ひとつひとつを丁寧に
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  • 法事料理3つのてまひま
  • 1.集落の女性が集まって作る
  • 2.2日間かけて味をつくる
  • 3.代々受け継ぐ漆器を丁寧に扱う
においだけでも美味しいお揚げ
においだけでも美味しいお揚げ
力加減で食感が変わる
力加減で食感が変わる
黒い膳に白いかんぴょう、美しい
黒い膳に白いかんぴょう、美しい
ほっと一息、一陣の風
ほっと一息、一陣の風

冠婚葬祭は今となっては業者が一手に引き受けるようになったが、昔はどの家庭も集落の人の手を借りて自宅で行っていた。

集落の者は家族同然。一つ一つにてまひま掛けて。祝福の気持ちは朱の膳に、慈しみと労いは黒の膳に。どちらも大切な人の門出を祝う大事なお料理。膳をしつらえるということはつまり、それを食べる人を想うこと。心を込めた法事料理を浦の人々は作ってくれた。

膳のメーンとなる平(という皿)にのる具は全部で5つ。人参・椎茸・こんにゃく・揚げ・かんぴょう。かんぴょう以外は全て出汁と砂糖・醤油・酒で炊いていく。だが、一緒には炊かない。一種ずつ別に炊く。素材の味の強い椎茸は本来の風味を殺さないように、味の染みにくいこんにゃくは濃い目の味でじっくりと、そしてかんぴょうは、その白がくすまないよう醤油の代わりに塩を使う。こういった気遣いは法事料理ならでは。

酢の物のキュウリは浦で採れたもの。大小さまざまなのはご愛嬌。薄くスライスしたキュウリに塩を振り、ギュウっと水気を搾り出す。手で、舌で、鼻で、味を調えていく。とても丁寧で根気のいる作業だ。

だけど大丈夫、一人でやっているわけではないから。集落の人たちとわいわい。思い出話をしたり、知恵袋を披露したりと、どの年代でも女性が集まればその場がパッと華やかになるのだから不思議なものだ。疲れたら風の吹き抜ける縁側で休憩して、食べる人のことを想う。きっと昔もこうやって膳をしつらえてきたのだ。

さて、熱々を召し上がれ、と言いたいところだがそうはいかない。熱さは漆器にとって大敵。艶やかな面が白く濁ってしまうのだ。でもいいさ、煮物は冷めるときに味が染みるものだから。気長に待とう。きっとそのための漆器なのだから。

地福庵に眠っていた膳は昭和36年の新聞紙に包まれていた。およそ半世紀の間、お寺の片隅で眠っていた膳が今、おもてなしの法事料理と集落の人々の想いをのせて、まだ見ぬ客人を今か今かと待っている。


ライター

太田 彩
長崎県佐世保市出身。なぜ高島に来たのかと尋ねられると「成り行きです。」田舎すぎず都会すぎず、湖ばかりでなく山ばかりでなく、何かとバランス感覚に優れた高島に惚れ、地域おこし協力隊に。活動集落内では人生の大先輩たちに囲まれ、「変わる勇気」と「変えない努力」を学ぶ日々を過ごしています。

カメラマン

坂井田 智宏
名古屋市から高島市朽木に移り住んで、10年目を迎えています。移住前に1年間の山村ボランティアを経験しており、同期でその活動していた妻と、3人の子ども達に囲まれ、地域の方々に温かく接していただき、暮らしを楽しんでいます。 普段から、勤めている観光協会やプライベートで、様々な写真を撮ります。まだまだ未熟な腕前ですが、触れたくなる、食べたくなる、生で感じたくなるような画が撮れたらと思っています。
太田 彩
長崎県佐世保市出身。なぜ高島に来たのかと尋ねられると「成り行きです。」田舎すぎず都会すぎず、湖ばかりでなく山ばかりでなく、何かとバランス感覚に優れた高島に惚れ、地域おこし協力隊に。活動集落内では人生の大先輩たちに囲まれ、「変わる勇気」と「変えない努力」を学ぶ日々を過ごしています。

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